あの日、大迫勇也が「半端ない」と言われるようになった日。




あの日、千葉県の市原臨海競技場のスタジアムに青森山田高校と鹿児島城西高校の試合を見に行っていた。全国高校サッカー選手権大会、その1回戦から優勝候補同士の対決として大会屈指の好カードとなった日本の両端に位置する県同士の戦いのピッチには、のちに、ブラジルW杯の日本代表に選出されることになる大迫勇也選手がいた。

この試合、青森山田は早々に2得点を先制した。その後も青森山田は攻め続け、3点目をもぎ取ろうかという決定的なチャンスもあった。もし、あの時点で3点差付いていたら・・・。青森山田を応援していた僕は、何度もそう思った。しかしその後、鹿児島城西は1点を取り返し、1点差に詰め寄ったことをきっかけに、その後に3得点し4対2へ。ロスタイムで1点返したが結局4対3で青森山田は破れた。

「1点を決め切れずに、1点取られた。」という1点の重み。

この試合に、選手のテクニック以外に感情的な何かが勝敗に関係していたかどうかは分からないが、この試合で2得点をあげて勝利に貢献したのが大迫勇也だった。

結局、この大会で鹿児島城西は決勝戦まで進み準優勝、大迫選手自身は歴代の大会最多得点を更新する10得点を記録し歴史に名を残す。この結果もあの1点が逆だったら、何もかも違っていたのかもしれない。

高校卒業後はJリーグクラブ6チームの争奪戦の中、鹿島アントラーズに内定。入団直後からJリーグでも活躍し、鹿島のルーキー最多得点と並ぶ6得点を記録している。

ワールドカップを目前に控えた欧州遠征では、FIFAランキング8位のオランダ代表に引き分け、同5位のベルギー代表に勝利した。その日本代表の反撃ののろしとなったのが、オランダ戦で見せた大迫選手のゴールだった。

大迫選手がオランダゴールを揺らした直後、ネット上では「半端ない」という文字が飛び交った。YouTubeにアップされたゴール動画のタイトルも「半端ない」の文字が使用された。

そう。いつの日からか、彼が得点を取ると日本のサッカーファンは、「ハンパない」と言う言葉を使うようになっていた。そうあの日から・・・。

「半端ない」の言葉が生まれた瞬間

1回戦の青森山田に勝利し鹿児島城西は、その後も順当に勝ち進み、準々決勝で滝川第二高校と対決する。この試合でも大迫選手は2得点を挙げて勝利に貢献した。

全国高校サッカー選手権大会では、試合終了後に両チームのロッカールームの様子を映すのが恒例になっている。青春真っ只中にいる彼らのすばらしい情熱を日本全体に伝えるためだろう。試合に負けた滝川第二高校の元主将・中西隆裕選手は、涙ながらに大迫のプレーに対し、こうコメントを残す。

「大迫 半端ないって」

この言葉はやがて一人歩きし始め、大迫選手の活躍と共に、その言葉の知名度も上がっていった。日本代表のスタジアムには、あの時の中西選手の顔がプリントされた大弾幕が用意され、「大迫半端無いTシャツ」まで発売された。大迫が活躍するたびに注文が殺到しているという。

hanpanai-t-shirts

大迫選手の躍進は続き、日本での活躍が認められた大迫選手はドイツ2部のTSV1860ミュンヘンへ移籍する。そして、ドイツ1部のケルンへの移籍も決定した。

これから始まるW杯。日本では早朝に試合が行われるが、もし彼がワールドカップで得点を決めて活躍することができれば、日本中の朝の挨拶は「おはよう」から「ハンパない」に変わっていることだろう。

これからも日本で「ハンパない」という言葉が聞くとこができるだろう。そして、この「ハンパない」という言葉も、あの1点が無かったら生まれなかったに違いない。

点を取れ!これは、サッカーに限った話ではない。


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