スーツという権威
2011年8月渋谷
未曾有の大震災を経験して数ヶ月だが、渋谷駅は例年通りの若者でにぎわっていた。
そんな、渋谷駅で帰宅のために湘南新宿ラインを待っていた時のこと。
帰宅時間のため、駅のプラットフォームは多くの人がいたのだが、
ふと、外国人女性が足早に歩いているのが目に入った。
その旅行バックを背負った外国人女性は、行き交う人に声を掛けては、しきりに手作りのCDを渡していた。
CDを渡し終わっては母親の元にいって談笑し、またCDを渡しにいく。それの繰り返し。
興味深く思いよく観察していると、スーツ姿の男性にだけ声をかけていた。
※自分にも渡してくれないかと思い、何食わぬ顔で近くに寄ってみたが、声をかけられることはなかった。スーツ姿じゃなかったからね
(ここからは妄想である)
女性は、10代のウクライナ出身で、家族で日本旅行に来ている。
彼女は、日本文化に興味があり、日本でのささやかなデビューを夢見ていた。
自分をプロモートする手段は分からないが、スーツ姿の日本人にはパワーが(お金が)あると信じていて、
自分を見出してくれることに期待している。
私が乗るはずの湘南新宿ラインよりも先に、成田エクスプレスがとまる。
笑顔の彼女はその中に吸い込まれていった。
彼女の目に、スーツ姿の日本人はどのように見えていたのであろうか。
アジアや東欧圏では、スーツをまとった日本人は権威なのである。
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