ハッカーでも時代には勝てなかったのか?休刊という戦略
日本には「HackerJapan(ハッカージャパン)」という雑誌がありました。ありましたと過去形なのは、先日この雑誌が休刊となってしまったからです。
HackerJapanとは、(高度なパソコン&インターネットのテクニックを用いるという意味での)ハッキングをネタにしたエッジの効いた表紙イラストが特徴的なパソコン専門誌で、1998年創刊の長い歴史をもった隔月発行の雑誌でした。
HackerJapan休刊のお知らせ
公式ブログでは編集長自らから「休刊のお知らせ」を記載しています。
突然のお知らせで恐縮なのですが、HackerJapan誌が諸般の事情により現在販売されている2013年11月号を最後に休刊することとなりました。
これまでご愛読くださった読者のみなさん、寄稿いただいた執筆者の方々、誌面作りに協力していただいたデザイナー・イラストレーター・カメラマンの方々に、心からお礼申し上げます。
編集部としても誌面で読者の方々に最後の挨拶ができなかったことはたいへん心苦しく残念に思っています。
とはいえ、本誌をムックとして創刊した1998年当時、その後15年も続くとは夢にも思いませんでした。月並みですが、始まりがあれば終わりもあります。HackerJapan誌は休刊しますが、読者のみなさんとはまたどこかでお会いしたいと思っています。
それまでお互いに“Keep on Hacking”でいきましょう。さようなら。
休刊の理由については「諸般の事情」とのことで、はっきりと明言されていませんが、根強いファンのいた雑誌であることには間違いないようです。
Hacker Japanを扱うオンライン書店Fujisanの読者レビューには、
・デジタル版を強く望みます。
・内容充実のパソコン誌
・唯一無二
・難しいがおもしろい!!
・最高の参考書
・クラウド時代のセキュリティ対策に
といった声がある一方で、
・月ごとの内容の出来にムラがある。
・無駄な付属DVD
・よく売り切れる
・定価が高い。
といった不満も上がっていたようでした。
オンラインメディアの台頭
理由として真っ先に考えられるのは、オンラインメディアの台頭でしょう。
インターネットやパソコンに関連したハックネタというのは、個人ブログや企業の開発者ブログの格好のネタです。鮮度の高い情報がインターネットから得られる昨今では、既存の雑誌メディアで勝負するのはなかなか厳しかったに違いありません。
オンラインメディアの台頭で割を食った代表と言えば音楽業界も有名です。YouTubeなどの動画ホストサービスが直接の原因かどうかはわかりませんが、CDの売り上げは右肩下がりで、楽曲が簡単にインターネットから取得できる現在では、単純に音楽だけではユーザーは課金しなくなってしまいました。握手権やコンサート優待券みたいなものを付属しないと買ってくれなくなってしまった。
ガラケー全盛期時代なんかは、着メロ&着うただけで大金が動いていたなんて、今となっては信じられません。
同じコンテンツをインターネットで手に入れることができるCDは、どんどん売れなくなっている背景があるのに、その一方で、2013年3月期にavexが過去最高売上をたたき出しています。
その売上を高めた要因がライブ事業や映像事業のようで、インターネットでは体験できないことや、YouTubeには流れることのない映像に対してはユーザーはお金を払う傾向にあるようです。
休刊という戦略
売り上げが落ちてきたと思われるミュージシャンが音楽活動を止めるとき、「活動休止」という言葉を使うときと、「解散」という言葉を使うときがあります。
例えば、メンバー同士のいざこざや音楽性の食い違い、単純に老化により質を維持できなくなった等の内的要因が原因の場合は、解散という選択肢をとる傾向があるように思います。誰とはいいませんが。
一方で、世の中の流行との食い違い、市場の縮小などの外的要因が原因の場合は活動休止という選択肢をとるように思います。
この「活動休止」、雑誌であれば「休刊」は一種の戦略です。外的要因によって需要と供給のバランスが崩れてしまったのなら、そのバランスが整うまで待てばいい。
活動休止に入ることで、自らは力を蓄え、世の中は少しずつ昔の思い出に対する期待で需要が高まります。そんな時にゲリラ的に新曲や臨時雑誌を発行することで、待ってましたとばかりに世の中は食いつきます。CDであれば「ベストアルバム」、雑誌であれば「総集編」を狙うのも手でしょう。
ということで、HackerJapanは次の機会を伺いながら眠りについたのだと、今後に期待しておきたいと思います。
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