西村ひろゆき氏「AbemaTVは失敗する」




AbemaTVをインストールして驚いたことは、そのアプリの出来の高さでした。YouTubeのようにインターネット上では今まで当たり前であった、自分が検索キーワードを入力して動画を探すような能動型ではなく、タイムスケジュールに合わせて受動的に動画がストリーミングされる様子は、まさにテレビそのもの。実際にフルハウスのように、これまで既存のテレビで放送されていた番組の放映権を取得しているし、オリジナル番組の質もテレビ朝日が加わっているだけあって高い。麻雀専用チャンネルやペット専用チャンネルのようにニッチな番組が設定されているのもインターネット的で、テレビの近未来系を見ている気にすらなるプラットフォームですが、西村ひろゆき氏はテレビ番組で「AbemaTVは失敗する」とコメントしています。なぜでしょう?

ひろゆき氏は、AbemaTV含めインターネットTV局がうまくいかない理由として、

「AbemaTVはコスト構造として本質的に無理」

「テレビは、電波塔から電波を垂れ流しているだけで見る側が勝手に受信するからは一人あたりに情報を送るコストがめちゃくちゃ安い。テレビは1千万人に送ろうと思ってもコストは変わらないけど、ネットって1千万人だとサーバー100台買わないといけない。で、1千万人見ました。その後の100台どうするの?別にみんなずっと見続けるわけではない。サーバーの維持費かかるし」

と述べている。ひろゆき氏は何年も前から同じような発言をしており、それは自身が参画していたニコニコ動画が長いこと赤字であった経験から感じ取っていることなのかもしれない。

もう10年近く前だったと思うがサッカー日本代表が、アジアカップだったかワールドカップ・アジア予選のアウェイの中東の地で試合をしたことがあった。しかし、どこのテレビ局も放映権を取得することができなかったのか、重要な試合にもかかわらずテレビ中継がないという異例な状況だった。

この気を商機と思ったのか、名前は記憶にないが、どこかのインターネットサービス会社が日本代表戦をインターネット上のストリーミング放送で生中継するということサービスを発表した。そのときは10万人限定で、1試合の視聴価格が1000円~2000円の間だったと記憶している。

インターネット上の通信では、例えばヤフーを見るときのように、ユーザーがページの表示をリクエストすると、そのリクエストに応じたレスポンスがサーバーから返ってくる。この一連のやりとりに対して、サーバーはコンマ何秒から、長くても数秒で情報を返却するので、1台のサーバーでも多くのサイト閲覧数をさばくことができる。

しかし、生中継のような動画の場合、サーバーと端末は常に通信している状態にあるので、1台のサーバーが100台のユーザーと通信できるように設定されているのであれば、100人に生中継するのに1台のサーバーで済むが、1万人に放送しようとすると同じスペックのサーバーが100台。100万人に放送しようとすると、サーバーが10000台。1000万人に放送しようとすると、サーバーが100000台必要になる。

このようにインターネットの生放送の場合、放送を受信する人数に比例して、サーバー側の負担を大きくなるため、どこかのインターネット会社がやったサッカー日本代表の試合のように、あらかじめ上限人数を決めて、それに見合うサーバー台数を用意して放映に臨む必要がある。同じようにニコニコ動画では、視聴人数が増えるとプレミアム会員が優先されて、無料会員を視聴から追い出すという方式をとっている。

一方、テレビで日本代表の試合を放送する場合、視聴者数が100人だろうが1万人であろうが、1億人であろうが、すでに中継局が全国に配置されているためコストは大して変わらない。この放送データが流れる構造上の決定的な違いから、ひろゆき氏はインターネットテレビ局は伸びないと主張しているのだろう。

ネット通信で動画を放送するにはコストが高くつくことを承知の上で、当面の赤字覚悟で人柱となり、インターネットテレビ局を作ったAbemaTV。しかし、近い将来、サーバーコスト・ネットワークのコストがさらに安くなり、拡張の柔軟性が増せば、インターネットテレビ局が、既存のテレビにとって変わる日が来る、そう信じている。


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